西表島のジャングルに私が落として来たもの

ゲータの滝(西表島)

私が初めて八重山地方に降り立ったのは、確か2009年のこと。
大都会TOKYOで毎日残業&頻繁な休日出勤で身も心も
荒んでいた私は、9月にやっと取れた夏休みを利用し、
石垣島経由で西表島を訪れたのでした✨

で、西表島に惚れた。

そこに待っていたのは、笑えるほど綺麗な海と、
ここホントに日本!?と俄かには信じられないジャングル。

ジャングル(西表島)

ここはアマゾンか!って感じの西表島のジャングル。

 

自然に憧れる都会っ子は、島と恋に落ちるしかありませんでした(゚∀゚)。
この時からというもの、私はひたすら西表を想って毎日せっせと働き、
年に2回、無理やり休みをひねり出しては通いつめました。
海とジャングルを日替わりで謳歌すること、
それが私の命の洗濯ホリデイとなったのでした。

そしてある日、事件は起きた…!

 

西表のジャングルで一人滑落

西表に通って3年目のあの日。
「いつものルートも飽きてきたな~」などと
慢心してた私は、陸地に巻くのをやめて
川だけを下って県道まで戻れるかやってみよう!と思いつき、
流れに沿って歩き出したのでした。

結論:ハイ、おバカちゃんでした!

誰も通らないところには、もちろん理由があるというのに(><)

川を下り出して10分もたった頃、だんだん大きな石が目立ちはじめ、
とうとう123mはある巨石群が、私の行く手を阻みました。

ゲータ川と岩

まだゴキゲンで写真を撮る余裕があった、巨石群の手前あたり。

 

左右は切り立った崖。後ろを振り返ると、
ルートを外れた場所はもう遥か遠く。
戻るのは大変だな~と思った横着な私は、
どこか乗り越えて川下側に行けるポイントはないかと、
巨石の壁の前を、左右にウロウロ。
そして、何とか手をかけられそうな岩と岩の隙間を発見!
苔で滑る窪みに手をかけ足をかけ巨石によじ登り、
向こう側に降りようとしていたその時!
先刻から私につきまとっては腕やら脚やら
チクチク刺してきたアブ(多分)が、顔面めがけて奇襲!

やーん!!ε=。 ゚(´Д`)ノ゚。

とっさに振り払おうと、右手を岩から話したその時

 

ズルッ! あッ!? ドンッ! ゴンッ!

 

視界がぐるっと回り、衝撃。私は数m下の、平らな岩場に仰向けに転がっていた。
驚きすぎて、しばらく青空をなすすべもなく見上げ

…え?なにコレ?

 

木漏れ日

※イメージですw

 

脳ミソと体は大パニック

…え?なにコレ?

…え?なにコレ?

脳は一瞬、何が起こったのか理解できず、フリーズ。
数秒後、我にかえると、すごいキョーフと無力感と痛みが、一気に襲ってきました。

私、落ちた!痛い(゚◇゚///)

こんな、ルートから外れた、誰も通らない巨石だらけの川の真ん中で、
脚の骨でも折れてたら、どうなるの??
動けないまま夜になったら!?
水かさが急に増したら!?
虫や蛇に襲われたら!?

って、そんなん考える前に、とりあえず、立て!立ってみろっ!私ー!!

 

天使と悪魔のイラスト

 

昔のアニメに出てくる左右の天使と悪魔みたいに、おびえる「自分A」と、叱咤する「自分B」が、脳内でせめぎ合った。
おそるおそる立ちあがってみた。良かった、立てる。
右脚、右腿、右肘、頭、打ち付けたところを全部触ってみた。
良かった、痛いけど、どこも折れてない、たぶん。血も出てない。
でも、身体のすみずみまで震えが止まらない。((( ;Д)))

 

一歩踏み出す。良かった、歩ける。
「大丈夫。大丈夫」自分BAを励ますのを聞きながら、
ずんずん歩き出した。
幸い、巨石ポイントはそこで終わり、普通の河原が続いている。
でも、自分の一歩に自信が持てない。
やみくもに歩くから、水の中の石を踏む足元がぐらつく。
でも、止まれない。止まったら帰れない気がして。
よろよろ、グラグラ、歩き続けた。

 

さすがにこれじゃー危ないわ、と冷静なBが一旦停止しようとしても、
アドレナリン出まくりでAがいうことをきかない。
「どうしよう!止まれない!」Bまでがパニくりかけたとき、

 

そうだ、タバコ吸おう!吸いたい!今こそ――(゚∀゚)――!!

 

ABの思考が一致したその時、足はぴたっと止まった。
適当な岩にゆっくり腰を下ろし、震える手でタバコを取り出し、火をつけた。
ただただ、水の文様を見つめて、

すー、ぷは~ぷは~す~ ( ̄△ ̄;)y─┛~~~~~

「ゆっくり足元を確かめながら歩こう、まだ日も高いし、大丈夫」
落ち着くために、声に出して言ってみた。
そして、震えが止まったところで携帯灰皿をしまって再出発。
しばらくして見慣れたルートが目に入ったときは、どんなにホッとしたことか

ジャングルのツルと苔

 

そして、ジャングルを抜けて、文明世界である道路に出た時、突然体のあらゆるところの痛みが襲って来ました。びっくりです。
人間、緊急事態だと痛みも感じないんですね〜。
稀有な体験でした。

宿に帰ってオカアサンにこの出来事を話したら、しこたま怒られましたです(ノ◇≦。)
そりゃそーだw

みなさま、ジャングルひとり歩きはとても危険なので、くれぐれも真似しないでくださいね〜!

 

————–

 

で、なぜこんな数年前の出来事を書いているかと言いますと、
自然を舐めたらあかんよ!という啓蒙のためでもなく、
JT(日本たばこ産業)とかの回し者とかでもなく、
私、自分の移住は、この時ジャングルに「マブイ」
落としてきたせいもあるのでは、と思っているのです。

 

魂は、落っこちるらしい。

「マブイ」または「マブヤー」とは、
沖縄の方言で「魂(タマシイ)」のこと。
あまりに驚いたり、ショックなことがあったりすると、
人はそこに魂を落っことしてしまい、気が抜けたり、
落ち着かないような状態になってしまうと信じられていて、
魂を戻す呪文を唱える儀式を、マブイを落としたその場所
しなくてはいけないそうなのです!
落下直後の私の状態を思い起こすと、
まさしくマブイを落としたに違いありませんw

そして、とうとう西表への玄関口・石垣島に移住。
思うに、落ちて砕けて散らばった私のマブイの欠片たちが、
ジャングルのあの水辺から、私を呼んだのではないでしょーか…(゚∀゚)

 

そんな訳で、今もことあるごとに西表のジャングルに出かる私。
恥ずかしいので周りを見回してから、落としたマブイを回収すべく、コッソリ小声で呪文をつぶやくのです。

「マブヤー、マブヤー、戻ってきてください!」と。

ゲータの滝(西表島)

西表島のゲータの滝にて。